汗の臭いは、体臭や加齢臭と並んで男性の悩みの上位に挙げられるのではないでしょうか。実は、汗が臭いことが原因で生じるストレスが、さらなる汗のにおいを招いてしまう可能性があります。そこで、におい対策についてまとめてみました。
汗がすべて臭いわけではない?
ほとんどの人は「汗をかけば臭いのは当然」と考えているのではないでしょうか。実は、汗には種類があり、すべての汗が臭いわけではないのです。そもそも、汗というのは人の皮膚にある「汗腺」という器官から分泌される体液のことで、通常においはありません。
そして、汗腺には
- 「アポクリン腺」
- 「エクリン腺」
の2つの種類があります。
「アポクリン腺」は、脇の下や下腹部、乳輪など体の一部に存在する大きな汗腺で、毛穴に向けて開口している汗腺です。アポクリン腺は人種や個人によって数に差がありますが、成長とともに大きさが変わります。第2次成長期を迎えるころ男女ともに大きくなり年齢を重ねるにつれて小さくなる傾向にあります。
ここから分泌される汗は粘り気があり乳白色で、脂質やたんぱく質、アンモニアなど、においのもととなる成分を含んでいるのが特徴といえます。現代では、においのある汗は嫌がられることが多いですが、かつてはこの汗が異性をひきつけるフェロモンのような働きがあったと考えられています。
一方「エクリン腺」は、全身のほとんどの皮膚にくまなくあり、1平方センチメートルあたり100個以上も存在しているといわれています。この汗腺から分泌される汗は無色で、99%以上が水分でできているため、サラサラしているのが特徴です。ここから分泌された直後の汗は無臭ですが、時間が経つにつれて細菌が繁殖してにおいを発することがあります。
ところで、この2つの汗腺は汗を出す仕組みに違いがあります。アポクリン腺は、思春期のころに活動を開始するのが一般的で、ここから多く汗が分泌されるのは、異性を意識したときや性的興奮を感じたときです。また、メカニズムはいまだに解明されていませんが、緊張したときやストレスを感じたときにも分泌されるといわれています。
エクリン腺の方は生理的な汗がほとんどで、発汗原因に
- 「温熱性」
- 「精神性」
- 「味覚性」
の3つがあります。温熱性は暑いときや運動したときに、手のひらと足の裏以外の全身で発汗して体温調節のために分泌されるものです。夏の暑いときに激しい運動をすると、1時間に2リットルもの汗をかくといわれています。
精神性は緊張したときや興奮したときに分泌されるもので、脇の下・手のひら・足の裏など局所的に短時間に発汗するのが特徴です。この局所的な汗は、人が狩りをして生活をしていたころの名残といわれていて、手のひらや足の裏を湿らせ、物をつかみやすくしたり感覚を鋭くしたりするといった役割を果たしていたと考えられています。
味覚性は、辛いものやすっぱいものを食べたときに反射的に分泌されるもので、特に額や鼻から多く発汗されるものです。反射的なので、刺激のあるものを食べ終われば汗も引きます。このように、いくつかの種類があり、すべてに臭いがあるわけではありません。それぞれ、きちんと対策をすれば嫌なにおいを防ぐことができるのです。
汗臭い身体を解消するには清潔が基本!
においを解消する基本は「清潔」に保つことです。まずは、汗をかいたら拭き取る習慣をつけましょう。汗は放置していると、時間とともに雑菌が繁殖して臭くなります。そのため、汗をかいたら雑菌が繁殖する前に拭き取ってしまうことが重要なのです。
ただし、暑いときや運動をしたときにかく汗は、乾いたタオルやハンカチで拭いても、なかなか汗が引かなくなってしまう可能性があります。なぜなら、暑いときや運動をしたときの汗は、体温調節を目的として分泌されるからです。
「汗を出したら体温が下がるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、汗が出ることによって体温が下がるのではなく、分泌された汗が蒸発する際の気化熱が体温を下げているのです。そのため、汗を拭き取り皮膚を乾燥させてしまうと体温は下がらないので、さらに汗が分泌されてしまうのです。
そこで、おすすめなのがタオルを濡らして拭くという方法です。これなら、タオルの水分が皮膚に残るので、その水分が蒸発するのと一緒に体温を下げることができますし、においのもとになる雑菌もきれいに拭き取れます。
また、毎日の入浴で汗腺を鍛えることも有効です。全身に存在するエクリン腺から分泌される汗は基本的に無臭でサラサラしています。しかし汗腺の機能が弱くなると、本来ならろ過されて体内に戻るはずのミネラルが、汗と一緒に体外へ分泌されベタベタした汗になります。
サラサラの汗は酸性なので、皮膚に雑菌が繁殖しにくいためきついにおいになることはありませんが、ベタベタした汗はアルカリ性が強くなり、雑菌が繁殖しやすくなるのでにおいも発生しやすくなる傾向があります。汗腺を鍛えるのには頻繁に汗をかくことが大切なので、毎日の入浴でたくさん汗をかきましょう。
ちなみに、たくさん汗をかける入浴法は「半身浴」です。半身浴の方法はとても簡単です。38~39度くらいのぬるめのお湯をみぞおちまで浸かるくらい溜め、15~20分ほど入浴するだけです。半身浴をすると、体の上部はお湯から出た状態なので、上半身で汗をかきながら効率よく体内を温めることができます。
半身浴でゆっくりと汗をかき続けることで汗腺が鍛えられ、サラサラの汗をかくことができるようになるのです。ただし、半身浴をしたからといって、いきなり機能を高められるわけではありません。毎日続けることで効果が期待できます。仕事などが忙しくて毎日ゆっくり入浴する時間がとれない人は、週に1度でも良いので実践してみてください。
それから、においのもととなる雑菌をきれいになくしたいからと過剰に体を洗うのは逆効果です。肌の表面には、肌の健康を保つために欠かせない善玉菌や表皮ブドウ球菌が存在しています。これらの働きで、肌表面は雑菌が繁殖しにくい弱酸性に保たれているのですが、ゴシゴシこすったり、殺菌作用のある石けんを頻繁に使ったりすると必要な菌まで洗い流されてしまいます。
そうなると、肌はアルカリ性になり、黄色ブドウ球菌や悪玉菌が増殖して、においの原因になってしまうのです。
汗のにおいを予防するには食生活の見直しを!
体の外からだけでなく、体の中からもケアすることが大切です。食生活の見直しをすれば、においを予防することができます。まずは、血液や体液など体内をアルカリ性にすることが必要です。なぜなら、臭い汗が分泌される大きな原因は、血液や体液の酸化だからです。健康な人の血液や体液は弱アルカリ性といわれています。
そこで、アルカリ性の食品を意識して摂取してみましょう。アルカリ性の食品とは「ナトリウム」「カルシウム」「カリウム」などのミネラルが多く含まれた食品です。ミネラルというと海藻を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。確かに、わかめやひじき、めかぶにはカルシウムやカリウムなどミネラルが豊富ですし、食物繊維もたくさん含まれているので便通がよくなり、においのもととなる老廃物を体外へ排出しやすくなります。
さらに、フコイダンという消臭効果のある成分も含んでいるのでおすすめです。しかし、これ以外にもアルカリ性の食品はたくさんあります。例えば、梅干です。梅干は牛肉100gの酸性を5gで中和できるといわれるほどのアルカリ食品です。強い抗菌作用もあるので、においのもととなる雑菌の繁殖も抑えてくれます。
とはいえ、たくさん食べれば良いかというとそうでもありません。梅干は塩分が多いので食べすぎは禁物です。多くても1日2粒までを限度にしてください。
また、体内の酸化を防ぐために抗酸化作用がある食べ物も摂取したいところです。パプリカや緑黄色野菜に多く含まれているビタミンCや、アーモンドやゴマに多く含まれているビタミンEは抗酸化作用が期待できる栄養素なので、毎日の食事に取り入れてみましょう。
逆に、汗のにおいを強める可能性があるので、食べすぎに注意しなければいけない食べ物があります。インスタント食品やスナック菓子は油分が多いので、過酸化脂質がたくさんつくられがちです。過酸化脂質は腸内環境を悪化させて悪玉菌の増加を招き汗臭くします。
他にも、肉類や卵などの動物性たんぱく質も食べすぎには気をつけてください。動物性たんぱく質を摂取し過ぎると、皮脂の分泌が増えるのでにおいの原因になりますし、消化に時間がかかるため、腸内で消化しきれなかった残留物のにおいが血液に流れ出て、においのある汗として体外へ排出されてしまうことがあります。
また、ニンニクや玉ねぎなどのにおいが強い食品に含まれるアリシンという強いにおい物質が血液に吸収されて全身に巡り、においのある汗を分泌させてしまうことがあります。だからといって、肉や卵をまったく食べないのは健康を害してしまうので適度な摂取は必要です。
においが気になる人は食べすぎないようにしましょう。さらに、アルコールは消化されなかった分が汗として排出されるのですが、分解されるときに強いにおいを発生させます。アルコールを摂取した後や、次の日は汗が臭くなっている可能性が高いので、気をつけてください。
着替えをこまめにする習慣で予防!
自分が脱いだ服が何となく汗臭いと感じた経験はないでしょうか。汗のにおいは体の表面だけで発しているわけではありません。着ている服に汗が吸収されて、においを出すことがあるのです。服はきちんと洗濯をしたつもりでも、においのもととなる雑菌が残っている場合があります。
汗をかくと着ている衣類に吸収されるのですが汗には雑菌のエサとなる皮脂が含まれているので、そのエサをもとに雑菌はどんどん繁殖していきます。そのため、服そのものが臭くなってしまうのです。衣類の汗臭さを少しでも予防するには、抗菌タイプの下着が良いでしょう。当然、下着にも汗は吸収されているので、普通の下着の場合は下着からもにおいを発しています。
抗菌防臭・消臭などの機能がある下着なら、汗を吸収してもにおいの心配がありません。下着で汗を吸収してしまえば服に浸み込む量も減らせるので、服そのものが発する汗臭さの心配が減るのです。
汗をかきやすい夏の暑い時期や、下着を着ていても汗が服に浸み込むほど大量に分泌される人は、こまめに着替えるとにおいを抑えられます。できれば着替えを持ち歩き、汗をかいたら着替えるようにすると安心です。
また、いくら洗濯をしていても残ってしまう雑菌は、正しい洗濯方法で除去しましょう。服についている皮脂やたんぱく質は弱酸性です。この弱酸性の汚れをしっかり取るには、弱アルカリ性の洗剤が効果的といえます。一般的な液体洗剤は、弱酸性や中性なのですが、粉末洗剤は弱アルカリ性なので洗濯洗剤は粉末洗剤がおすすめです。
ただし、粉末洗剤は洗浄力が高いため、色落ちしやすいというデメリットがあるので色物・柄物の洗濯には注意が必要です。それから、酸素系漂白剤で雑菌をしっかり除去するのも効果的といえます。特に汗のにおいが浸み込んで、においが取れなくなった服にも効果があるので試してみてください。
バケツに40~50度位のお湯を入れて、酸素系漂白剤を溶かします。お湯がぬるくならないうちに衣類を入れて、30分ほど浸しておきます。つけ置きが終わったら普通に洗濯をするだけです。服に染み付いたにおいが強くてなかなか取れないときには、つけ置き時間を延ばしてみましょう。
酸素系漂白剤にも液体タイプと粉末タイプがありますが、粉末タイプの方が消臭効果としては高いのでおすすめです。商品によって絹や毛には使用できないなどの注意点もあるので、パッケージに記載されている注意書きをしっかり読んでから始めなければいけません。
雑菌を繁殖させないためには、洗濯物の干し方もポイントです。生乾きの状態だと雑菌も繁殖しやすくなっているので、できれば太陽の下で干します。外で干すのが難しければ、日当たりの良い場所に干したり除湿器を使ったりして、なるべく早く乾くように工夫します。このとき洗濯物同士がくっついているとなかなか乾かず雑菌が繁殖しやすくなるので、空気の通り道を作って干すように心がけてください。
制汗剤の使用で汗臭さを予防!
においを予防するのに、制汗剤を使用するという方法もあります。制汗剤には大きく分けて5つの種類があり、それぞれ特徴があります。
スプレータイプ
まずは、CMでも目にすることが多い「スプレータイプ」です。持ち歩き可能な小さいサイズも市販されているので、どこでも手軽にスプレーできるというメリットがあります。香りにこだわった製品も多いので、芳香剤のような目的で使用することもできるでしょう。
手軽に広範囲に使用できるものの肌への付着率が低いため、汗を抑えるという効果の持続時間は短く、こまめにスプレーし直す必要があります。また、つけすぎると毛穴にパウダーが詰まり、かゆみを引き起こす可能性もあるので注意してください。
ロールオンタイプ
容器の先端にボールが付いていて、それを肌の上で転がしながら直接肌に制汗剤を塗る「ロールオンタイプ」もあります。肌への密着度が高く落ちにくいので高い効果が期待できますが、液状やジェル状なので塗ってから乾くまで少し待たなければいけません。
また、ボールの部分はあまり大きくないので、脇の下など狭い範囲に塗るなら問題はないのですが、広範囲に塗るのは難しいでしょう。肌に直接つけるため、使用後はボールを拭くなど、きちんとケアをしなければ雑菌が繁殖してしまう可能性があります。
スティックタイプ
「スティックタイプ」もロールオンタイプ同様に直接肌に塗り込みます。ロールオンタイプは液状やジェル状ですが、スティックタイプは固形石けんのような固い素材でできていて、被膜が丈夫なので効果が高いのが特徴です。
しっかり薬剤が塗り込まれますが、継続して使用していると肌の弱い人はかぶれやかゆみを引き起こすこともあります。
クリームタイプ
それから「クリームタイプ」です。クリームを直接手に取って気になる部分に塗り込んでいきます。効果が高く肌に優しい成分でできていることが多く、肌の弱い人でも使いやすいのが利点です。ただ、手に取って塗り込むので、使用後はきちんと手を洗わなければいけないという手間があります。
シートタイプ
そして、汗ふき専用のウェットティッシュという感覚で使用している人も多い「シートタイプ」も制汗剤のひとつとして挙げられます。制汗効果の高い薬剤はあまり使われていないので、汗をかいた後に、においやべたつきを拭き取るという意味合いが強いようです。
以上挙げた5種類にはそれぞれメリット・デメリットがあるので使い分けをしてみてください。例えば、朝はクリームタイプでしっかり汗を抑えて、日中はスプレーでにおい対策をするなど、自分のライフスタイルに合ったタイプをいくつか持っていると便利です。
ただし、脇毛を生やしたままにしている男性がロールオンタイプを使用すると、ボールを転がすときに脇毛を巻き込んでしまうことがあるので、少し使いにくいかもしれません。そのため、脇の下にはスティックタイプやクリームタイプなどの方が使いやすいでしょう。
生活習慣を少し変えるだけでも!
気になるにおいは、生活習慣を少し変えるだけでも抑えることができます。まずは、適度に運動をしましょう。運動不足の人は新陳代謝が悪くなっているので、代謝不足が原因でアポクリン腺から分泌される脇汗が多くなるといわれています。さらに代謝不足のために血液中に吸収された刺激臭が汗と一緒に体外へ分泌されて、においがきつくなるのです。
代謝を良くするためには有酸素運動をおすすめします。可能なら毎日30分はウォーキングやジョギング・ランニングをすると良いのですが、家の中でなわとびや踏み台昇降をするのも効果が期待できます。また、毎日は無理でも週に3回は運動を行った方が効果的です。
エアコンのつけすぎにも注意が必要です。エアコンをつけていれば快適な温度の中で過ごせますが、汗をかくことが少なくなるので汗腺が衰えやすくなります。キンキンに冷えた部屋は気持ちが良いものですが、適度に汗をかくくらいの温度設定が理想的です。
さらにストレスが原因で、においがきつくなることもあります。人は、ストレスを感じると体内を酸性にする活性酸素が発生します。活性酸素はウイルスなどの外敵から身を守るために人の体には必要なものですが、過剰に分泌されるとさまざまな弊害が生じます。
活性酸素が増えすぎると、老化を早めたり病気になりやすくなったりするという話を聞いたことがある人も多いかもしれません。活性酸素は過酸化脂質をつくりだし、それがにおいの原因にもなります。ストレスはにおいの原因を作るだけでなく、汗をかく機能にも影響してきます。正常な状態なら、ろ過されて体の中に戻るはずのミネラルが汗と一緒に排出されてしまうのです。
さらに雑菌や皮脂と混ざるときついにおいを発する乳酸も分泌されてしまい、においを強くするといえます。汗のにおいが気になりすぎてそれがストレスになると余計においが強くなってしまう可能性もあるので注意しましょう。ストレスを慢性化させないためにも適度なストレス解消が必要です。適度な運動はストレス解消にもなるので、ぜひ実行してみてください。
汗が臭い男性必見!汗のにおいは予防できます!のまとめ
汗臭さの予防方法はたくさんあります。体の中からと外から、服のにおいや普段の生活習慣など、いろいろな場面で簡単に実行できることばかりです。人それぞれ効果の差はありますが、自分でできることから始めてみると良いでしょう。毎日入浴する習慣がある人なら、入浴するときは半身浴に変えるだけでも汗腺は鍛えられますし、汗をかきやすい人なら抗菌効果のある下着に変えてみるのも効果的です。汗をかくのは暑い夏の時期だけではありません。日ごろからちょっとしたことを意識して、汗のにおいが気にならない体質に改善していってください。