抜け毛や薄毛など、見た目を気にするのは女性だけではありません。男性の中にもいつまでも若々しく健康な髪の毛を保っていたいと考えている方は多いでしょう。そこで、ここでは脱毛症の原因から抜け毛の予防に必要なシャンプーの選び方についてご説明します。
抜け毛の基礎!髪はなぜ抜ける?
脱毛症とは何らかの原因で毛が生え変わるサイクルが乱れてしまい、退行期・休止期の髪の毛、つまり抜け毛が多くなってしまう症状のことです。脱毛症はその原因や毛包の状態によっていくつかの種類に分類することができます。
皮膚科に通院される方に多い症状が
- 円形脱毛症
- 男性型脱毛症(AGA)
です。
円形脱毛症は、コイン大の円形脱毛斑ができてしまうのが特徴です。もっとも重症の場合には、
- 複数の円形脱毛斑ができてしまう
- 頭皮全体の髪の毛が抜けてしまう
などの頭皮に症状が現れるもののほかに
- 眉毛やまつ毛などの体毛まで抜けてしまう
ものまであります。円形脱毛症は細菌やウイルスなどの外敵から身体を守るはずのリンパ球が、誤って毛包を攻撃してしまうことが原因で発症する自己免疫性疾患の一種であると考えられています。
また精神的ストレスも大きく関わっています。通常、円形脱毛症は自然と治癒しますが、フロジン液などの薬剤を塗布して治療することもあります。
AGA(Androgenetic Alopecia)ともいわれる男性型脱毛症は、額の生え際、頭頂部のどちらか一方または双方から髪の毛が次第に薄くなっていく症状です。日本人男性の約3割にみられる症状です。
男性型脱毛症は、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼ(2型)と結びついて生成されたDHT(ジヒドロテストステロン)が影響しているといわれています。つまり、DHTが毛周期のサイクルの成長期を短くしてしまい、髪の毛が長く太く成長する前に抜けてしまうようになるのです。
毛包が存在し続けている限り適切なケアを行えば髪の毛は再び成長します。しかし、何もせずに放っておくと側頭部、後頭部以外の髪がすべて失われてしまう方も少なくありません。ちなみに男性型脱毛症は男性特有のものではなく、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少してきた30代後半以降の女性にもみられる症状です。女性型の(Female)AGAであることから、FAGAと呼ばれています。
もっとも、一般に男性よりも女性の方が症状の進行速度がゆっくりであるため、AGAは男性に多い症状とされているのです。
そのほか、
- 内科的疾患
- 睡眠不足
- 栄養不足
- 間違ったヘアケア
などが原因となって、脱毛症の症状が起きているケースもあります。このように脱毛症と一口にいってもさまざまな症例があり、それぞれ原因・対処法が異なっています。
一日に抜ける本数はどのくらい?
抜け毛の症状があると不安に思ってしまうかもしれませんが、1日に1本も髪の抜けない男性はいません。正常な髪の毛は成長期を終えた後、次の新しい髪に押されて自然と抜け落ちていきます。特にシャンプーをすると、髪の汚れが落ちるように不要な毛が抜けていきますので、ごそっと髪の毛が抜けたように感じられることもあります。
日本毛根抜け毛研究会によると、1日あたり平均59本抜けるとのデータがあります。さらに髪の毛の抜ける量には個人差があるため、250本以上抜けても心配しなくても大丈夫な方がいます。
要するに、役目を終えた髪の毛が抜けることには何の問題もなく、新しく生えてくる量と抜け毛の量の均衡がとれている限り、特に問題はありません。
適切なケアを行いたい場合には、抜け毛の量ではなく自分の抜け毛の状況を把握しておきましょう。仮に成長期にある髪の毛が抜けているとすると、まだ新しい髪の毛の準備ができていないため、対策が必要です。新規メンバーがまだ到着していないのにメンバーが次々に脱退していけば、メンバー不足に陥ってしまうのは必然といえます。
抜け毛の質を把握するには、抜けた毛の長さに注目してみてください。もし細くて短い髪の毛ばかりが抜けるのであれば、成長期の髪の毛が抜けている可能性が高いといえます。また、毛根の形がいびつであったり、白い付着物がついていたりする場合には、頭皮環境が悪くなってしまっている可能性があります。
加えて、フケが多い場合にも頭皮環境が悪く、毛周期が乱れる原因となっていることがあります。思い当たる点がある方はヘアケアや生活習慣を見直してみましょう。
こんなシャンプー使っていませんか?
抜け毛を心配している方の中には、シャンプーに苦手意識を感じている人がいるかもしれません。確かに髪の毛に抜けてほしくないと考えている状況で、シャンプーの泡とともに手に数十本の髪が付着しているとあまりいい気はしないでしょう。
しかし、頭皮に付着した汚れを放置すると、汚れが毛穴を塞ぎ炎症を起こしてしまって、抜け毛を助長させかねません。頭皮を清潔に保つことが抜け毛ケアの基本となりますので、シャンプーはきちんと行いましょう。適切なケアのためには頭皮に良いシャンプーを選ぶことが重要です。
清潔な頭皮環境を保つために必要なシャンプーですが、抜け毛に悩んでいる方が使用するのは避けた方が良い商品があります。
たとえば、べたつく頭皮をスッキリさせると話題のトニックシャンプーがあります。男性は女性よりも皮脂量が多いため、トニックシャンプーを好んで使用する方がいます。メントールやトウガラシチンキが配合されているものもあり、清涼感があるため夏場に使用する人が多く、美容室では「ひんやりシャンプー」などと呼ばれることがあります。
しかし、トニックシャンプーには
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
など洗浄力の強い成分が配合されているため、使い方を誤ると、髪に必要な皮脂まで取り除いてしまい髪の毛へのダメージを抑えられなくなります。強すぎる洗浄成分は髪の毛の細胞膜に穴を開けてしまい、髪の毛にも大きなダメージを与えます。
さらに必要な皮脂まで奪ってしまうと、今度は皮脂が必要以上に分泌されるようになるので、かえって頭皮の皮脂が過剰になってしまいます。頭皮環境の悪化は抜け毛に悩む方にとっては避けるべき事態なので、トニックシャンプーを使用したいならば、頭皮へのダメージの少ないアミノ酸系シャンプーと併用しましょう。
また、ラウリル硫酸Naなどのほかにウラレス硫酸やウラリル硫酸といった成分が含まれている石油系シャンプーも抜け毛に悩む方が使用すべきでないシャンプーです。泡立ちが良く、お値段も手ごろなものが多いため、心惹かれるかもしれませんが、頭皮を保護したいならば使用を避けてください。
男性のシャンプー選び!5つのポイント!
使用すべきではないシャンプーを把握したところで、今度は反対に使用した方が良いシャンプーの選び方をご紹介します。
ただ、
- 「市販品のシャンプーはダメ、美容室のシャンプーならどれでもいい」
- 「値段の安いものはダメ、値段の高いものならどれでもいい」
というわけではなく、また、ここでご紹介したシャンプーが全ての方に合うとは限りません。
さらに、年齢とともに髪質は変化するので、数年前に自分に合っていた製品が今も自分に合うとはいえません。このため、ここでご紹介するポイントを参考に、ご自身に合うシャンプーを選んでみてください。
まずシャンプーを購入するときには、必ず成分表をチェックしてください。この成分表は含有量の多い順に表示することになっているので、「水」の次に多い成分(洗浄成分)は要チェックです。
ラウリル硫酸Naのように
- 「ラウリル」
- 「硫酸」
という名のついた刺激の強い成分が表示されているシャンプーは避けるようにしましょう。
逆に含まれていると好ましいのが
- 「海藻エキス」
- 「アロエ抽出液」
- 「キトフィルマー」
などの保湿成分です。
さらに
- 汚れをしっかり落としてくれるもの
- 配合されている植物エキスなどで育毛効果の期待できるもの
を選ぶことをオススメします。
また価格帯も重要ですよね。シャンプーは毎日使用するものなので、高すぎるシャンプーを購入してしまうと続けられなくなってしまいます。購入しやすい価格帯であることを一つのポイントとしてみてください。
価格帯が比較的高めのものであっても、コンディショナーが不要のものであれば結果的にみるとコストパフォーマンスが良いこともありえます。
以上のように、
- 刺激の強い成分の有無
- 保湿成分の有無
- 汚れを落とす効果の高さ
- 育毛効果の有無
- 価格帯
がシャンプー選びのポイントです。
自分の肌質を見極めるには?
シャンプーを選ぶにあたっては、自身の頭皮の肌質を見極めておくことがとても大切です。たとえば脂っぽい方(脂性肌の方)の中には、1週間、2週間に1度のペースでトニックシャンプーを使用した方が良い方もいます。美容院で尋ねてみるなど自分の肌質を知る方法にはいくつかありますが、簡単に実践できる方法をご紹介しましょう。
まずシャンプーで髪を洗った後、若干湿り気が残る程度になるまでドライヤーで乾かします。次にあぶらとり紙を額の生え際とつむじに貼り付け、30分程度待ってみましょう。
- 脂が染み出てくるようであれば脂性肌
- 2時間以上経過しても脂が染み出てこないようであれば乾燥肌
といえます。1,2時間で脂が染み出てくるのは健全な頭皮である証拠です。
あぶらとり紙を使用するのは結果を見やすくするためなので、頭皮を指で軽く押してみて皮脂が出るかどうかを確かめるだけでも、肌質を見極めることはできます。
少々根気強さのいる方法なので、より簡単に知りたいなら次のポイントをチェックしてみてください。
- 髪にボリュームがなく夕方になるとぺちゃんこになってしまう
- 湿った大きなフケがよくとれる
- 頭皮のべたつきが気になる
といった条件に当てはまる場合は脂性肌だといえます。
逆に
- 髪の毛のパサつきや肌のかさつきが気になる方
- 小さなフケのよく出る方
は乾燥肌だといえるでしょう。一般的に男性には乾燥肌の方よりも脂性肌の方の方が多く、特に10代や20代の方の中には脂性肌の方が多い傾向にあります。
正しいシャンプーの方法!
次は正しいシャンプーの方法です。ご存知の方も多いと思いますが、いきなりシャンプーをつけてしまうのは好ましい方法ではありません。
まずは泡立ちを良くして髪の毛の汚れを落としやすくするために、ブラッシングをしましょう。その後、38℃前後のぬるま湯で髪の毛を1分半程度濡らします(予洗い)。実際のところ、シャンプーをつけなくても約70%の汚れは落ちるといわれています。
次にシャンプーを手に取ります。シャンプーの量ですが、女性でもボブ程度の長さであれば1プッシュで良いので、男性なら多くの方が1プッシュで大丈夫です。シャンプーをつけすぎてしまうと洗い残しの原因となってしまうので気をつけたいところです。
手に取ったシャンプー剤を手のひらで素早く泡立て、髪の毛につけます。手で泡立てるのが難しければネットを使用すると良いでしょう。いったん手のひらで泡立てるのは、シャンプー剤を直接地肌につけてしまうと頭皮にダメージを与えてしまうからです。
いよいよ洗髪ですが、その際は爪を立てず、指の腹で1,2分程度洗い、下から揉みあげるようにするのがコツです。ゴシゴシ力を入れて洗うと気持ちいいかもしれませんが、頭皮に傷をつけてしまうといけないので、優しくマッサージするように洗いましょう。
次はすすぎです。4,5分程度かけてシャンプーを丁寧に洗い流してください。髪の毛が長くないのであれば、二度洗いするまでもなく汚れを落とすことができるでしょう。
その後、タオルで水気をふき取り、ドライヤーを使って髪を乾かしてください。濡れている髪の毛は傷みやすくなっているので、タオルで乾かすときには髪の毛をこすり合わせないように注意しましょう。また、ドライヤーは熱でダメージを与えてしまわないように髪の毛から20cm程度離すのがポイントです。
この一連の流れは肌質によって異なりません。ただし、乾燥肌の方は、場合によってはシャンプー剤を使うのは2回に1回のペースに落として、予洗いだけで済ませる日を設けると良いでしょう。
抜け毛の予防はシャンプーで!男性におすすめなシャンプーの選び方とは?のまとめ
脱毛症はさまざまな要因が重なり合って発症するものです。このため、シャンプー剤を変え、洗い方を改善したとしても、残念ながら抜け毛を完全に予防することはできません。ストレスを溜めてしまわないように気を付けて、栄養バランスのとれた食事を心がけることがとても大切です。抜け毛予防のためには5αリダクターゼの発生を抑える作用を有する大豆イソフラボンと亜鉛を多く含んだ食事がオススメです。逆に脂っこいものや刺激の強いものはあまりオススメできません。ご自身に合ったシャンプーを使って、生活習慣を見直すことで、抜け毛対策を行いましょう。